今年読んだ一番。 ギャチュン・カンの代償はあまりにも大きく、一時は落ち込みそうになった。しかし、ギャチュン・カンを選んだことを誤りだと思ったことはないし、アタックしたことに対しても悔やんではいない。むしろギャチュン・カンに挑戦してよかったと思っているくらいだ。あれほどの厳しい状況に追い込まれても、びっくりするくらい冷静に判断を下し、自分の能力を最大限に発揮し、行動できたことに喜びさえ感じている。今まで積み上げてきたことに間違いはなかったのだ。 著者は日本を代表するクライマー、山野井泰史。氷と岩の山行を日記のように綴る。「ギャチュン・カンの代償」とは手足の指を十本、凍傷で失ったこと。登頂後、嵐と雪崩に遭遇し、妻・妙子とともに脱出を試みて奇跡的に生還した―――代償になる。 すさまじい登攀への思いと生きる意思に、そのまま撃たれる。「生きている」という強烈な感情が伝わってくる。もちろん、著者のよう