「いつか話さなければならないと思っていた」 京都市伏見区に住む遠藤道雄さん(68)。本名は朴龍基。在日朝鮮人3世だが、ふだんは通名の「遠藤」を名乗って生活している。在日コリアンの歴史を少しでも知る読者なら、遠藤という通名が他にはない珍しい名であることに気づくはずだ。 なぜ「遠藤」なのか。遠藤さんがその名の由来を知ったのは高校生の時、親戚が集まる法事の席だった。何とはなしに「なんでうちの通名は遠藤なのか?」という話題になったという。 すると叔父(遠藤さんの父親の弟)が、やおら神妙な面持ちになった。 「いつかお前たちにも話さなければならないと思っていた。今から話す内容は、お前たちの子どもの代にも伝えてくれ。その次の代にも伝わるように……」 叔父は、その約40年前に関東地方で大地震が起きたこと、地震後の混乱のなか、自分たちの父親、朴栄業がいかにして生きのびたのか、とつとつと話しはじめた――。 1