現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしていく。 3年目、テツヤさん(42歳、仮名)は「ど素人」として介護の世界に飛び込んだ。今、彼の名刺にはすでに「管理者」「生活相談員」といった肩書が並ぶ。上司や先輩たちがうつ病になったり、仕事になじめなかったりして次々と辞めていく中、気がつくと、札幌市内のある高齢者施設の責任者になっていたという。 介護保険関係の計算や収支の管理、スタッフのシフト調整といったデスクワークはもちろん、小さな施設なので、利用者のクルマでの送迎、食事や排せつの介助といった介護業務もこなす。夜間の呼び出しに備えて自宅などで待機する「オンコール」は、原則、管理者の担当なので、体調を崩した夜勤スタ