がん患者へのプルトニウム注射、治療費の払えない患者への大量の放射線照射──放射能人体実験という核兵器開発の最暗部が一連の新聞報道で明るみに出て米国を大きく揺さぶっている。実験は、ソ連と激しい核開発競争をしていた1940年代から70年代初めにかけて米政府が極秘に実施、その後も最高機密とされてきた。しかし、真相究明を求める世論が高まり、エネルギー省は、人体実験を含むかなりの核関係機密書類を今年6月に公開する方針を固めた。(ワシントン=大塚隆) 秘密を暴く口火を切ったのは、ニューメキシコ州のアルバカーキー・トリビューンという地方紙だ。女性記者のアイリーン・ウエルサムさんは、原爆開発のマンハッタン計画の一環として、原爆の原料となるプルトニウムの毒性や体への吸収率を調べるための人体実験が、45-47年に行われていたことを87年に知った。被験者は18人。記録にはコード番号しか記されていなかったが、6年