黒岩比佐子『音のない記憶 ろうあ写真家 井上孝治』(角川ソフィア文庫、二〇〇九年五月二五日、カバーデザイン=長尾敦子)。黒岩さんの最初の書き下ろし単行本。その成立については女史がブログでも書いておられるので、ぜひ読んでみていただきたい。 http://blog.livedoor.jp/hisako9618/ ただ、これは井上孝治伝ではあるが、いちばんの根本には黒岩女史の、聴覚障害者に初めて対したときのショック、それまでの自分自身の無自覚が許せないという強い思いがあって、それがひとつの心棒となってこの著作を貫いている。 きわめて精力的な取材、本になるとも決まっていないにもかかわらず、これだけ打込めるのは驚くべきことである。そこでも女史は井上を知る人々に、ある意味、執拗に、井上と聴覚障害あるいはそれによる差別との関連性を問いただしている。 聴覚障害といえば、松本竣介が思い浮かぶ。その一種独特な
![音のない記憶 | daily-sumus](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/2a963a4737ecd279deba003f6db4d60717cb67f4/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fpds.exblog.jp%2Fpds%2F1%2F200905%2F22%2F43%2Fb0081843_2012153.jpg)