「父さんと会うのは428日、母さんは429日ぶりだ」。10月下旬。久しぶりに沖縄本島内の実家に戻ったサトルさん(21)=仮名=が両親を見つめた。ひきこもりからの自立支援をうたう民間業者に、神奈川県内の全寮制施設へといきなり連れ出された“あの日”以来の再会。「引き出し屋を頼る前に、なぜ相談だけでもしてくれなかったの」。突然、日常を奪われた恐怖、怒り、悲しみが今もサトルさんの心を縛り続ける。(「家族のカタチ」取材班・篠原知恵) 「東京からお客さんが来たよ」。20歳の誕生日を目前に迎えた昨年8月15日昼。いつものようにリビングのソファでスマホをいじっていると、父テツヤさん=仮名=に声を掛けられた。「東京?」と疑問に思った、その瞬間。父と入れ替わりに、背の高い男性3人がどかどかと現れた。 「誰?警察ですか」。寝起きの頭を必死に働かせ、震える声で尋ねると「警察と協力し、ひきこもりの人たちを救う団体だ