『家守奇譚』や『裏庭』など、現実とこの世ならざるものとの交歓を描いてきた作家、梨木香歩。新作『海うそ』(岩波書店)は、南の島の豊かで厳しい自然を背景に、一人の青年と人の世が失ってきたものに思いをはせる小説だ。デビュー以来20年、「喪失と向き合ってきた過程」の作品だと言う。 時代は昭和初期。地理学者の秋野は、現地調査のため南九州の「遅島」を訪れていた。主な研究対象は家屋の構造や、明治維新後に廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)で破壊にあった寺院の遺構だ。平家の落人伝説や民間信仰モノミミの謎にもひかれていく。来島前、秋野は婚約者や父母、恩師ら身近な人を相次いで亡くしていた。島と共鳴する喪失感。 蜃気楼(しんきろう)(海うそ)が見える洋館でみつけた地図を頼りに、秋野は島を縦断する調査に踏み出す。地図には壊された寺院の跡が詳しく記されていた。館の元の主人は、かつて修行僧だったが、明治政府の意向で還俗(げん
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