きつねのはなし (新潮文庫 も 29-2) 森見 登美彦 日本の夏、怪談の夏。これからの季節にピッタリな、不思議で怖い現代のこわい話です。 森見さんの作品は「太陽の塔」「四畳半神話体系」「夜は短し歩けよ乙女」と読んできて、全部同じじゃん、恋愛に不器用な男と不思議ちゃんな女の話ばっかりじゃん、と飽きかけていたのですが、今回は全く違う作風でびっくり。上記3作の、どこかフワフワした作品世界とはうって変わって、じっとりと湿った空気とじりじりと照りつける太陽の印象が強烈。これぞまさに日本の夏という妖しい雰囲気が印象的でした。 表題作は、古道具屋でアルバイトをすることになった青年が経験する不思議な出来事の話。始めは、(古道具屋の女主人)ナツメさんはしっとりとしてかつ少女的な無邪気さもあったりしてとても魅力的だなあ、とのんきに思いながら読んでいたんですが、途中で天城という男が登場してから雲行きがおかしく