伊藤大輔「斬人斬馬剣」(1929)を見た。 わずか20分ほどの断片にもかかわらず(オリジナルは120分程度)映画としてちゃんとスジが通るものになっていて、その面白さがはっきりと伝わるのに驚いた。いや、面白さが伝わるだけではきちんと言いあらわしてはいないな。映画として大傑作だと断言できる。ここでは20分版の斬人斬馬剣を出来る限り再現してメモする。 十時来三郎(月形龍之介)と相棒の左源太(天野刃一)は村人たちを苦しめる城代・大須賀(関操)と代官・山室(市川伝之助)の配下の奸臣たちを次々と襲っては血祭りに上げる。それに対抗して腕利きの浪人たちを集めて十時を襲わせる代官。だが、十時は襲ってくる刺客たちを軽くいなすと彼らを説得しはじめる。 十時「おまえはなぜ俺を斬ろうとする?」 浪人「食うためだ」 十時「その食う米は誰が作っている?」 悪政により百姓たちを苦しめている悪代官の手下であることを恥じる浪