過酷であるほど、彼が大切に抱える光の愛おしさが伝わってくる。その輝きが、知的で美しい存在が、めちゃめちゃに潰されてゆくのを全身で感じる。 「なんでもあり」が小説だが、この苦痛は耐えがたい。本を読むのが好きな人ほど、息苦しさを感じるだろう。なぜなら、彼の仕事は、運び込まれてくる本を圧縮機で潰し、紙塊を作ることだから。 本ばかりでない。食肉解体業者が運び込んでくる、蝿がたかった血まみれの紙も一緒に圧縮する。ゲーテと蝿、ニーチェと鼠が一体化された紙塊を、祭壇のように恭しく並べる。知的で美しいものと、醜怪でグロテスクなものが渾然一体となって、読み手の前に並べられる(ここで悲鳴をあげたくなる)。 背景にはプラハの春がある。1968年にチェコスロバキアで起きた民主化運動で、ソ連の軍事介入により、文字通り「圧殺」された。大学教授をはじめとする知識人は職を終われ、言論の自由は奪われ、厳しい検閲と徹底的な統