1月パリ・メンズコレクションのコムデギャルソン。黒人が多く使う髪形コーンロウのウィッグ(かつら)を白人モデルに着用させて批判されたという。これに対する「誰かを傷つける意図はなかった」というコムデギャルソン側の謝罪(?)は、いかにも官僚的でいただけない。問題は意図があるかどうかではなく、結果だからだ。殺す意図がなくても殺したら「殺人」である。「意図がなかった」といって「殺人」にならないのなら(実際、多くの裁判では「殺意」の有無が争われるが、それは量刑の問題である)、原理的には何をしても罪に問われないことになる。正当防衛は殺意の有無ではなく、結果の正当性の問題である。 表現はすべてコンテクスト(文脈)によって意味を持つ。つまり、原理だけでは決定できない。文芸批評家のフィッシュが言うように、コンテクストのない文を示されても、人はその文が多く使われるコンテクストを想定して聞く。「傘をさそう」と聞け