1991年7月22日午後11時30分、ウィスコンシン州ミルウォーキーのダウンタウンでの出来事である。2人の巡査がパトカーで巡回していると、左手首から手錠をぶら下げた黒人の青年が金切り声を上げて飛び出して来た。なんでも若い白人の男にアパートに連れ込まれ、いきなり手錠をかけられたのだと云う。半信半疑だった巡査たちは、彼があまりにも真剣なので、一応そのアパートに行ってみることにした。 その付近一帯はストリップ小屋やゲイ・バーが密集し、売春婦がたむろするいかがわしい場所で、住人もほとんどマイノリティーだった。案内されるままにオックスフォード・アパートメント213号の呼び鈴を鳴らすと、この場所にふさわしくない、大人しそうな男が顔を出した。ジェフリー・ダーマーと名乗るその白人男性は、至って冷静に対応した。 「いや、ほんの冗談のつもりだったんですよ。彼とは酒を飲んでいたんです」 巡査が手錠の鍵を出すよう