この30年ほどの間に、フランス革命は「革命」だったのかどうかさえ定かではなくなった。歴史研究の「進展」によって、「革命」の輪郭は失われてしまった。そこに、J・イスラエルの衝撃的作品『急進的(ラディカルな)啓蒙』(2001年、本邦未訳)は登場した。以来、彼は、これまでの米仏革命の研究書を悉くなで斬りにし、鮮明な切断線を引き、何が「革命」だったのか、誰と誰が敵なのか、友なのか、雄弁に語り続けている。歴史に「顔」を与え返したともいえるイスラエルの膨大な仕事は、近代思想史において、スピノザ主義すなわち普遍的平等原理を認めるのか否か、という対立軸を鋭く浮かび上がらせる。主張の激しさは多数の批判を引き寄せた。スピノザはスピノザ主義者だったのか? スピノザ(思想)だけが基準か? 個別の事象で論証が粗雑すぎないか? こういった疑問ないし非難に、イスラエルは強力に反撃し、分厚い本を次々と書いた。いまや、「急