マンション6階のベランダに突然、人影が現れた。 「殺される!」 昼食のうどんを作ろうと台所に立っていた17歳の少年はそう思って鍋を放り出し、リビングの向こうまで走って逃げ、ドアを閉めた。その時、扉の向こうから声が聞こえた。 「警察、けーさつ!」 2015年6月の正午すぎ、捜査員十数人が少年の自宅に家宅捜索に入った。ベランダの人影は、踏み込むタイミングを狙って隠れていた警察官だった。リビングにあったノートパソコンを画面が開いたままの状態で押収するため、少年がパソコンから離れる瞬間を待っていた。閉じると記録が消える特殊な仕掛けが施されていた。 少年は中学1年のころから不登校となり、高校にも進学しなかった。自宅にこもり、外部との接点はお年玉をためて買ったパソコン。匿名の掲示板でハッキングの世界を知り、見よう見まねで試すうち、「指導者」として仰がれるようになっていた。ツイッターにハッキングの「成果