「年収が多くても暮らしに余裕なんかない。優遇措置が多い非課税世帯はずるい」「本当の弱者は男性、守られる立場の女性がうらやましい」……。世間的には「勝ち組」とされる人が自ら弱さをさらけ出し、時には他の弱者を攻撃する「弱者争い」のような状況がSNSなどで起こっている。 論壇誌で「ひろゆき論」など話題の論考を相次いで出している成蹊大の伊藤昌亮教授(メディア論)に、なぜこうした現象が起きるのかを聞いた。 ある面では恵まれている「とても大変」な人 ――「強がる」の言葉はあっても、「弱がる」とは言いません。それが最近は、なぜあえて弱さを声高に叫ぶ風潮があるのでしょうか? 「強がるのは、自分は権力を持っていると存在を誇示し、社会の中でその権力に見合う権利や認知を求めていると思われます。弱さを見せるのも、実は同じでしょう。弱いから自分は社会の中で擁護されないといけない、このつらい気持ちが共感してもらえない