→紀伊國屋ウェブストアで購入 「歴代足利一族への招待」 京都に住んでいる者にとっては、足利将軍家は身近な存在だが、本書(清水克行著『足利尊氏と関東』吉川弘文館、2013年)は、書名にもかかわらず、全体として足利尊氏のみならずその歴代一族への最良の案内の一つに仕上がっている(「尊氏」となる前は「高氏」とすべきだが、煩雑さを避けるために「尊氏」で統一する)。 そもそも、私たちは尊氏を足利家の嫡男としてみることに慣れているが、尊氏の父貞氏は金沢顕時(北条一族中の名族)の娘との間にできた高義という嫡男がいた。足利氏の当主は代々北条一族の女性を正室に迎えていたので、高義が21歳の若さで早世しなければ尊氏が家督を継ぐこともなかったはずである(尊氏の母は上杉清子だが、上杉家は足利家の家臣筋の家なので、貞氏の側室であったと著者は指摘している)。その証拠に、足利家の嫡男は「三郎」を名乗る決まりになっていたに