はあ?もう一回説明してくんない?は?それ本気で言ってんの?違う?違うって何が? 部下を問い詰めるときの渡辺さんの物言いにはある種の人間に共通する特徴があった。まず蔑みの感情をこめたメッセージを発する。「はあ?」というのがその代表だ。私の席からは見えないけれども、表情もきっとそれに類するものになっている。それから相手に何かを言わせる。その後、それに含まれる誤りを相手自身に指摘させる。さらにその理由を尋ねる。再度「はあ?」が繰りかえされる。「私がバカだからです」とでも言わせたいのかと思う。 それは少なくとも問題の改善のための会話のようには聞こえない。作業中に耳に入るからひどく気になって、でも私は渡辺さんにそれを言えない。渡辺さんは私の会社の人ではない。三ヶ月前にチームを率いて来て、業務用のシステムを構築している。渡辺さん、と誰かが言う。 渡辺さんこれ食べてください。娘が台湾に行ってねえ、学校で