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ブックマーク / honz.jp (5)

  • 『典獄と934人のメロス』横浜刑務所を襲った激震と猛火、そして囚人たちが解放された - HONZ

    1923年、近代化へ邁進する日を直撃した関東大震災。帝都・東京を中心に関東一円へ大きな被害をもたらし、死者・行方不明者は10万人強にも及んだ。このような自然災害の理不尽さは、時や場所を選ばぬことにある。 被害は平穏に暮らしていたはずの一般市民のみならず、囚人たちを収容する刑務所にも襲いかかった。なかでも壊滅的なダメージを受けたのが、震源地にほど近かった横浜刑務所である。強固な石造りの門柱は倒れ、鉄製の扉が折れ曲がり、左右に延びる外塀は姿を消し、一般人と囚人を隔てていた全ての壁が無くなってしまった。 今日残される多くの記録には、「横浜刑務所の囚人が解放され、強盗、強姦、殺人など悪の限りをつくし、横浜のみならず、帝都・東京の治安も悪化させた」と残されているそうだ。囚人たちが震災のどさくさに紛れて塀の外へ飛び出したのなら、さぞや阿鼻叫喚の地獄絵図であったと考えるのが普通であるだろう。しかし、実

    『典獄と934人のメロス』横浜刑務所を襲った激震と猛火、そして囚人たちが解放された - HONZ
  • 『原発事故で、生きものたちに何がおこったか。』もしこの変化が、序章にすぎないとしたら…… - HONZ

    数日前、庭木の枝に小さな鳥の巣を見つけた。お椀型の巣はからっぽで、内側をシュロなどの繊維、外側はコケや地衣類でおおわれ、クモの巣で枝に接着されている。「メジロかな?」可愛らしい緑色の小鳥の姿を思い浮かべて笑顔になりかけたとき、不安におそわれた。コケや地衣類は放射能に汚染されやすいと聞くが、それを巣材に使った小鳥は、どうなってしまうのだろう? そんな疑問をもったとき、書店で見かけたのが書である。子ども向けの写真絵だが、解説もしっかりとしていて、読みごたえがある。著者は山形県在住の写真家で、原発事故で被害を受けた福島県の阿武隈山地にも昆虫調査で足を運んでいた。 書のタイトルを見てまず想像したのは、「放射線を浴びた生物に奇形や生殖能力への影響が出たことがショッキングな写真でたくさん紹介されている」……というものだったが、違った。 テレビ局の記者から「角のまがったカブトムシが見つかっています

    『原発事故で、生きものたちに何がおこったか。』もしこの変化が、序章にすぎないとしたら…… - HONZ
  • 『弱くても勝てます』-編集者の自腹ワンコイン広告 - HONZ

    弱小野球部のユニークな戦略と部員の素顔をどう描き、いかに読者に伝えるか。難度の高いこの命題に挑んだ「チーム・ヒデミネ」を野球にたとえるなら……。 1回表に、1番・巧打者「小説新潮」編集者葛岡がきわどい球を選んでフォア・ボール、2番・出版部単行担当ベテラン今泉の鮮やかな三遊間ヒット、3番・指名打者髙橋秀実が豪打のポテン・ヒットで満塁、知将青木秀憲監督(開成高校硬式野球部監督)が見守る中、スタンドの応援団やチア・リーダー、装画北村ケンジさんや装幀デザインの只野さんたちの声援を受け、4番・助っ人のHONZ土屋敦さんが走者一掃のランニング・ホームラン(外野手のトンネルあり)を打ち、いきなり先取点(=ベストセラー)! さらにたたみかけるように2月28日に文庫版を発売、あの桑田真澄さんをチームに迎え、鮮やかな「作品解説」で追加点を挙げました――。 さらにさらに、4月からはこのを原作にTVドラマが始

    『弱くても勝てます』-編集者の自腹ワンコイン広告 - HONZ
  • NODE No.9 書評 『すずしろ日記』 - HONZ

    『北斎漫画』が好きだ。何千人もでてくる人物はそれぞれに可笑しみがあり、当時の風俗を知る画像情報でもある。 『洛中洛外図屏風』も好きだ。金箔を使った狩野派による屏風絵だ。もちろん、諸国の大名などが京を知るための画像情報が分である。 ところで書の著者である山口晃によれば「イギリスが狩野派を讃えるのをあてこすって、フランスが「北斎がすごい」と持ち上げた」のだという。さもありなん。 さて、その山口晃の絵が好きなのだ。洛中洛外図屏風のような構成に、北斎漫画のような登場人物、つまり大和絵の典型を油彩で描いているのだ。 しかし、山口のテーマは時空を超越した日である。同一画面に侍や足軽もいるし、テレビカメラクルーもいる。合戦図では後ろ脚がバイクになっているメカ騎馬も出てくるし、パソコンを使う侍やヘルメット姿のそば屋の出前もでてくる。 大和絵独特の鳥瞰「吹き抜け屋台」で描かれている御屋敷の中を見ると、

    NODE No.9 書評 『すずしろ日記』 - HONZ
  • 『ストラディヴァリウス』 - HONZ

    17世紀から18世紀にかけてイタリアのクレモナでアントニオ・ストラティヴァリウスによって作られた5挺のヴァイオリンと1挺のヴィオラの物語だ。600挺ほど現存している「ストラティヴァリウス」は現在でも最高の価格が付くヴァイオリンである。1994年に日音楽財団が購入した「パガニーニ・カルテット」といわれる2挺のヴァイオリンと1挺のビオラ、1挺のチェロのセットの価格は1500万ドルだった。書の主役の1挺である「ケーフェンヒューラー」という1挺には805万ボンドの値がついていた。円高のいまでも11億円を超える。 このの著者は1965年生まれのイギリス人だ。書が最初の著作だという。しかし前半のストラティヴァリ人の伝記はこのに尽きるといっても良いほどの出来だ。イギリス人特有の歴史と工芸品への顕微鏡的なこだわりがある。物事を総覧的に記述するという能があるといっても良い。羨ましい限りだ。日

    『ストラディヴァリウス』 - HONZ
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