石垣島に移り住んですぐの頃、深海釣りの船に乗せてもらった。 船主のIさんは島人ではないけれど長年にわたり石垣の海に通い詰めている。釣りにも泳ぎにも長け、その活力は僕より四十以上もご年配だとはとても思えない。魚を獲りすぎることを好まず、ほどほどの釣果で切り上げたり、竿を出さずにただ魚探で海底探検しながら船を走らせるだけのこともある。知識や技術は確かなもので、時には島の海人も頼りにするほどだ。 その日の一投め、水深350メートルで釣れたのが“ビタロー”ことハナフエダイだった。“アカマチ”(ハマダイ)を期待したIさんは「ビタローやね」と少し拍子抜けしたように笑ったけれど、僕には初めて見る魚だったし、鮮やかな黄色と空色、朱鷺色のような淡いピンクが透明に重なり合う色彩に釘付けになった。しゃがみ込んで写真を撮る横で、Iさんは近くで操業しているらしい海人と電話していた。「どこそこの水深これこれぐらいで、
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