わたしとコロが出会つたのは、1980年のよく晴れた日の午後でした。 わたしはその日、釣り堀に連れていつてもらつたのです。コロとはそこで偶然出会ひました。 釣り堀といつても、そこはトタン屋根のプレハブ小屋の屋内型の小さな釣り堀で、小屋の中に大きな「いけす」があり、そこに一尺ばかりの真鯉(真鯉とは真つ黒の鯉のことで、色のついた鮮やかな鯉は錦鯉と云ひます)がたくさん放たれてゐました。 普通は釣り堀といふものは、屋外にあるもので、室内の釣り堀は当今はそれほどたくさんはないと思ひます。釣りは野外でのんびり糸をたれて、のどかな時間を楽しむのが醍醐味ですから、屋内では少々感興がそがれるものです。 さて、わたしのいつた釣り堀ですが、釣り人はいくらかのお金を払ひまして(三十分五百円位だつたでせうか)、釣り糸と針のついた二尺ばかりの短い釣竿と、団子状のえさを貰ひ、いけすに糸をたれるのです。 鯉はうようよしてゐ