2023年6月、スイスに本社を置く大手食品メーカー・ネスレは、カーボンクレジットを使ってキットカットやネスプレッソなどの特定の商品ブランドのカーボンニュートラルを目指す取り組みを中止することを決めた。その代わりに、事業とバリューチェーンにおける温室効果ガス排出量削減に重点を置くという。 カーボンクレジットとは、温室効果ガスの排出削減量を、クレジット(排出権)として発行し、企業間で取引できるようにする仕組みのことをいう。ネスレの方針変更は、「カーボンクレジットを使ったカーボンニュートラルはグリーンウォッシュではないか」との疑義が欧米で広がっていることが背景にある。 企業がオフセットのために用いるカーボンクレジットは主に民間セクターが主導する「ボランタリークレジット」である。そのなかには、いわゆる品質が低い「ジャンクカーボン」が多く含まれており、グリーンウォッシュの疑いを招く原因となっている。