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  • コンピュータで分子の形を見るー2013年ノーベル化学賞薬作り職人のブログ

    今日は、ノーベル化学賞の発表日。化学というとフラスコやビーカーを使った実験を思い浮かべます。しかし、今年のノーベル化学賞の舞台となったのは、コンピューターを用いた化学、「計算化学」とよばれる分野です。計算化学は薬作りの世界においても用いられているのですが、今回の受賞内容に関しては知らなかったことも多いので、ノーベル賞サイトにある解説を読んでみました。 The Nobel Prize in Chemistry 2013 - Advanced Information 「分子についての学問」である化学においては、「分子の形を見る」というプロセスが欠かすことが出来ません。分子の形を知るための実験手法としては、X線回折構造解析やNMR(核磁気共鳴法)と呼ばれる方法があります。その一方、計算化学では、分子の形を「理論に基づいた計算」で求めます。 今年度のノーベル化学賞は、大きな分子の構造・分子どうしの

  • 抗体医薬品の開発を後押ししたいのはわかるけど。薬作り職人のブログ

    先日、このようなニュースを見かけました。 抗体医薬品開発へ新拠点整備 経産省、13年度予算案に26億円計上 - SankeiBiz(サンケイビズ) 抗体医薬品開発へ新拠点整備 ... ヒトの免疫機能を活用した「抗体医薬品」の開発を後押しするため、経済産業省は製薬会社や機器メーカー、大学などを集めた新拠点を整備する計画を進めている。がん細胞など標的となる病原体に直接作用することから、副作用が少ないとされる最先端の薬だが、海外メーカーの製品が大半を占めているのが現状。経産省は産官学の連携効果を生かし、5年以内をめどに新薬開発の技術確立を目指す。 ただ、国内メーカーの参入は遅れており、経産省は製造技術の向上を図るため、新拠点の整備を計画。2013年度政府予算案に26億円を計上した。 抗体は、体外からの異物を認識する働きをもつタンパク質です。抗体は、タンパク質の構造(の一部)を認識して、強く結合す

  • 膵臓のβ細胞を増殖させるホルモン”Betatrophin”薬作り職人のブログ

    "Betatrophin: A Hormone that Controls Pancreatic β Cell Proliferation"という題名の論文が、科学誌Cellに発表されました。 Cell - Betatrophin: A Hormone that Controls Pancreatic β Cell Proliferation この論文では、膵臓のβ細胞を増殖させるホルモン”Betatrophin”の発見を報告しています。膵臓のβ細胞は、血糖値(血液中のグルコース濃度)を下げる作用を持つホルモン「インスリン」を分泌する細胞です。糖尿病では、インスリンの働きが低下することで血糖値が長期間上昇します。血液中の高濃度のグルコースは、血管・腎臓・網膜・神経などにダメージを与え、血行障害による下肢切断、腎不全、網膜症・神経障害などの様々な合併症を起こします。糖尿病の病態には、膵臓のβ

  • リピトールからヒュミラへー売上高ランキング主役交代の時薬作り職人のブログ

    ひと月ほど前の話ではありますが、製薬業界の現状を象徴する記事を紹介します。 12年世界のブロックバスター 売上トップに抗体医薬の抗リウマチ薬ヒュミラ ミクス調べ ミクス編集部は、2月7日までに発表された欧米のグローバル製薬企業の2012年通期業績から、世界の製品売上トップ10製品をまとめた。売上トップは抗リウマチ薬ヒュミラ(アボット、現アッヴィ)で、低分子医薬品に代わって初めて抗体医薬品がトップとなった。抗体医薬はランキングトップ10製品中に5製品がランクインしており、抗体医薬が企業業績に大きく寄与し、存在感が増していることも確認された。 低分子医薬品(低分子薬)とは、有機合成によってつくられる化合物を主成分とした薬です。また、抗体医薬品とは、体外からの異物を選択的に認識する働きをもつタンパク質「抗体」を主成分とする薬です。遺伝子組み換え技術を用いてつくられることから「生物学的製剤」ともよ

  • 細胞の外から中にどうやって情報が伝わるかー2012年度ノーベル化学賞薬作り職人のブログ

    日、2012年度ノーベル化学賞の受賞者が発表されました。受賞したのは、米デューク大学のロバート・レフコウィッツ教授と、米スタンフォード大のブライアン・コビルカ教授の二人です。 受賞内容は「Gタンパク質共役型受容体の研究」。「Gタンパク質共役型受容体の研究」の研究を通じて、細胞外から細胞内への情報伝達がどのように行われるかを解明した功績が評価されての受賞です。 体の中の細胞は、ホルモン、神経伝達物質などの様々な物質によって機能調節を受けます。これは、細胞の外からの命令が細胞内に伝わった結果、細胞機能に関わる仕組みのスイッチが入る(もしくは切れる)ことを意味します。レフコウィッツ教授とコビルカ教授は、このスイッチの構成要素であるGタンパク質共役型受容体の正体を突き詰め、どのようにしてスイッチの切替が行われているのかを解明したのです。 彼らが注目したのは、アドレナリンという生体内ホルモンでした

  • "味を感じる器官が、少なくとも15種類の甘さの違いを識別できる機能を持つことが分かった"のソースの論文を読んでみた。薬作り職人のブログ

    先日、「舌にある味を感じる器官が、少なくとも15種類の甘さの違いを識別できる機能を持つことが分かった」というニュースを取り上げました。 「何を言いたいのかよくわからない科学記事とは」 この記事では、ニュースのソースとなる論文がわかんなかったので、想像で色々書いてみました。その後、「蝉コロン」さんがこの話題を取り上げ、「ソースではないか」と思われる論文を紹介されていました。せっかくなので、この論文を読んで見ました(私も甘味の専門家ではないので、もしかしたら誤認があるかもしれません)。 蝉コロン "少なくとも15種類の甘さの違いを識別できる機能を持つことが分かった"について 蝉コロンさんがこの論文を見つけた経緯は以下のとおり(引用) 元記事に情報がなさ過ぎて泣けるんですけど、著者名の"Ishiguro"と、薬作り職人さんが指摘してるレセプターである"GPCR"をgoogleさんにここ一週間の設

  • さよなら、実験生活。薬作り職人のブログ

    実験生活との別れは、唐突にやって来ました。朝のメールチェックで見かけた、「所長室に○○時に出頭してください」というシンプルなメール。 年度末のこの時期は、人事異動の季節です。もちろん、研究所も例外ではありません。毎年、数人は研究現場を離れる人事異動が行われます。今まで、多くの人を見送って来ましたが、いよいよ自分なのか、当にそうなのか。。出頭の時刻まで、落ち着かない時間が流れます。 時間になり、所長室に出頭すると、早速、異動の内示をいただきました。 内容は、4月からの企画部門への転出。会社入って十数年、大学時代からだと20年近い実験生活を送って来ました。その実験生活に、ひとまずピリオドを打つということです。 企画部門というのは、会社の戦略を策定したり、新規計画を策定したりするところ。研究所が実働部隊であれば、企画部門は参謀部。足を使って情報を集め、頭を使って情報を整理し策を練る。策士の集

  • 「ホンマでっか」と科学。薬作り職人のブログ

    「ホンマでっか」というテレビ番組が放送されています。 「世の中で国民が話題にしている物や噂のエピソードでホンマでっかなこと」を発信するというコンセプトだそうです。ゲストには、さまざまな分野の評論家が登場し、世の中の常識からは思いつかないような情報をいろいろと発信しています。 で、科学系のネタが取り上げられると、「ホンマでっか」というタイトルに呼応するかのように、ネット上の科学を専門にしている人たちから「ホンマでっか?」という反応が吹き出しています。 放送されている内容がネットで紹介されているのですが、科学ネタなのに科学的な根拠自体が薄かったり、一部のデータを拡大解釈して一般的な結論を導き出していたり、なかなかツッコミどころがおおい番組のようです。 番組を見る方(とくに科学とは関連が薄い一般の方)も、ただ「へー」とか「ほー」とか、そのまま受け入れるのではなく、つねに「ホンマでっか」という姿勢

  • NHKスペシャル「夢の新薬が作れない~生物資源をめぐる闘い~」。薬作り職人のブログ

    今日放映されたNHKスペシャル「夢の新薬が作れない~生物資源をめぐる闘い~」は、非常に考えさせられるところが多い番組でした。 番組の内容を簡単にのべると 「新薬の成分・原料として必要な生物資源について、先進国(新薬メーカー側)と途上国(生物資源がある国)との折り合いがつかない。具体的には、新薬材料の需要増による生物資源の乱獲、新薬から得られる利益配分、などについての一致点が見いだせない」 ということ。 番組の簡単なまとめは、以下のページにまとめられています。 Nスペ「夢の新薬が作れない~生物資源をめぐる闘い~」実況 新薬開発において、生物資源は昔から大きな役割を果たして来ました。伝統的に用いられてきた薬草がヒントとなり、そこから得られた成分が薬となる、というのは、新薬発見の王道です。 20世紀後半になると、有機化学合成の技術が発展し、このような生物資源由来ではない、純粋な化学合成による薬が

  • ついにきたノーベル賞。2010年ノーベル化学賞。薬作り職人のブログ

    日発表されたノーベル化学賞は、薬作りに関わる人間には、非常にうれしいものとなりました。 受賞者は、アメリカ・デラウェア大のリチャード・ヘック氏、アメリカ・パデュー大の根岸英一氏、北海道大の鈴木章氏。受賞理由は「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング反応」。 日人受賞者がでたことはもちろんうれしいのですが、「薬作りの根幹となる有機化学合成の分野」というところが、新薬開発の現場の人間として非常にうれしく思います。有機化学やってる人の間では、「いつもらってもおかしくはない」という意味で、「ついにきたノーベル賞」といったところなのだろう、と思います。 私は、生物系の研究者なので、実際にこの反応をつかった実験をしたことはありません。とはいえ、私達の研究所でも日常的につかわれてる反応がノーベル賞を受賞する、というのは、とっても身近なとこでノーベル賞が出たような感じがして、当にうれしいこ

  • 「実験方法の欠点」を意識する。薬作り職人のブログ

    仕事していると、期限を設定され、その中で最大限の結果を出すことを要求されます。 もちろん、うまくいく仕事ばかりではありません。当初の目的を100%達成できるような100点満点の仕事以外にも、どうしても何らかの不足・不満・欠点が残る結果しか出せない仕事があちこちにころがっています。 私達が取り組んでる新薬開発において、100点満点取れるような仕事というのは、いわば「確認試験」といわれるようなタイプのもの。「ミスが許されない」というプレッシャーはもちろんあるのですが、基的に予備試験で決定した条件に従いそれをトレースしていくだけなので、100点満点にちかい点数はとれて当たり前、という感じ。 一方、予備試験については、100点満点をとれることはまずありません。予備試験とは、新しい実験がはたしてできるかどうか、できるとしたらどれくらいの質のデータをとることができるのか、をいろいろな条件を試すこと

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