森下泰輔のエッセイ「 戦後・現代美術事件簿」 第2回 「模型千円札事件」 犯罪者同盟の諸富洋治が万引きを咎められ戸塚署で取り調べを受けていたら所持品より「赤い風船あるいは牝狼の夜」がみつかり、吉岡康弘の性器ドアップ写真をみつけられてしまった。 「捜査員が猥褻罪を立証するために乗り込んだ宮原安春宅から赤瀬川原平の千円札の作品がみつかった。警察はすぐに印刷所も洗った。」(今泉省彦) 犯罪者同盟が自費出版した「赤い風船」にも赤瀬川の千円札が印刷されていた。さらに宮原宅で押収された赤瀬川の千円札作品が問題となり、両者を印刷した近代印書館がマークされて、千円札原版も押収された。赤瀬川はこれら写真製版した千円札を封筒に入れて送付し、個展「あいまいな海について」案内状中では、「私有財産制度破壊」と書き、まさにマルクス主義者然としていた。それが当局から通貨及び証券模造取締法違反かどうかの疑義を掛けられたわ