2020年に、統一から30年を迎えた東西ドイツ。『物語 東ドイツの歴史』で、ソ連による占領からはじまる40年の内幕を描いた河合さんに、研究をはじめた理由やドイツでの思い出などうかがいました。 ――そもそも、なぜ東ドイツを研究対象にしたのでしょうか。 国家社会主義体制が崩壊するなかで、公平や平等という問題を現実に即して考えたかったのです。最初は、漠然と東欧やソ連(コーカサスや中央アジア)の研究をしたいと思っていました。恩師から指導を引き受ける際の条件として、現地の言葉が分かることと現地に行くことを示されました。第二外国語でドイツ語を勉強していたのもあり、またベルリンの壁の崩壊が印象的だったこともあって、東ドイツを選びました。 ――あとがきに、本書を読めば「東ドイツ市民が独裁体制を平和裡に打倒したという結末(中略)の期待は裏切られ」るとあり、その期待は河合さんが「研究の道に入った時に抱いていた