A君は子供の頃、近所のおじさんやクラスの友達とよく将棋を指していました。 自己流の将棋でしたが、A君はもともと聡明で要領の良い子だったので、たくさん指している内にどんどん強くなっていき、次第にクラスの友人も彼には全く敵わなくなり、それどころか親戚や近所のおじさんたちまでがコロッと負かされてしまうという有様でした。そのうち対等に指せる相手が周囲にはいなくなってしまい、たんだんとつまらくなって将棋から離れていってしまいました。 そんなA君もやがて大きくなり、地元の会社に就職しました。 暮れに社員旅行で温泉旅館に行ったA君は、そこで宿泊客の貸出し用の将棋盤を目にしました。途端に子供時代の思い出がよみがえってきます。A君は急に将棋を指したくなりました。そこで誰か将棋をする人はいないかと会社の人たちに尋ねてみると、B課長が名乗りをあげました。 Bさんは棋歴20年近くの将棋愛好家でアマチュアの有段者(