いま「陰陽師」といえば、多くの人が思い浮かべるのは、小説やマンガなどに描かれる、人知を越えた霊的な能力を持つ平安時代のマジカルな存在、安倍晴明の姿だろう。 しかし陰陽師は平安貴族の政争のなかにだけいるのではなかった。 歴史を通じて、古代から明治はじめまで陰陽師は存在し、社会のなかで大きな役割を果たしてきた。 時間と空間(方位)の吉凶を調整し、占い、祭祀、まじないに携わることによって、国家の存立からお産・病など個人のくらしにいたるまで、人々に安心をもたらし、未来への指針を示してきた。各時代の暦の作成・頒布にも深く関わった。 そのために最新の知識・技術や経験を継承し、時間と空間に対する感覚をつちかい、磨き上げ、それらを人々に伝える真摯な努力を続けてきたのが陰陽師である。 本書は、具体的な資料にもとづいて、古代から近代にいたる歴史のなかで、陰陽師がどのような役割をはたし、どういった文化を担ってい