県立図書情報館の収蔵庫。これまで引き取った大量の文書で既にほぼ満杯状態という=奈良市大安寺西1で2022年12月9日午後1時5分、稲生陽撮影 旧家の蔵などに保管されている古文書が近年、かつてない速度で失われている。集落に多くの古文書が保管されている奈良県内でも、過疎や世代交代で屋敷や蔵が取り壊されるたびに大量の古文書が消えていくという。膨大な埋蔵文化財や全国最多の国宝仏像など数多くの文化財を抱える県内だからこそ、こうした文書(もんじょ)に重きが置かれなかった独特の理由があるという。【稲生陽】 「史料を守れないことは『歴史学の敗北』。我々は常に敗北し続けていると言える」 そう話すのは、2022年から県と協力して地域の古文書の所在確認調査を進めている奈良大学の木下光生教授。「過去を知ることは今を知るために必要だ」をモットーに、現代にもつながる近世の貧困対策を掘り起こす研究を続けている。 個人保
