暑苦しい午後の部屋。 窓を開ける。 網戸が閉まっている。 窓を開けても網戸は閉まっている。 網戸の網の目が目に入る。 網の目だけが見えてくる。 網の目モザイクに見えてくる。 窓の外にあったのは青かった空。 その青はなくなった。 網の目モザイクの青白さが見えるだけ。 あったはずの空をもう一度見たい。 目を凝らす。 網の目が消え空が現れる。 ほんとうの青い空。 網戸を開ける。 青い空と蚊が入ってくる。 蚊の羽音が入ってくる。 羽音が耳元に届き大きくなる。 次々に羽音が殖えてゆく。 窓を閉める。 羽音が消え、風が止み、首の後ろが痒い。 すりガラスの窓。 青い空も網の目もすりすりに変える。 ガラスの向こうに何があるのか見えやしない。 風の代わりに扇風機を回す。 ちがう。 扇風機の羽根を回す。 回ると羽根が見えなくなる。 羽根を見ると目が回る。 吹いてくる風は暑苦しい。 扇風機を消して窓を開ける。