■「真のエリートとは」を問う 実に挑発的な米国論だ。 貧困や格差に関する本なら山ほどある。しかし、過去50年間に及ぶ豊富なデータを駆使して著者が描き出すのは、もはや同じ米国人としての行動様式や価値をほとんど共有しない今日のエリート階級と労働者階級の絶望的なまでの「断絶」だ。 そのうえで「勤勉・正直・結婚・信仰」という「建国の美徳」を保持しているのはエリート階級であり、幸福の基軸を成す「家族・仕事・コミュニティ・信仰」においても優れているとする。 かたやその対極にあって米社会の伝統的美徳を蝕(むしば)んでいるのが増加の一途を辿(たど)る労働者階級だと結論づける。 これだけでも物議を醸すのに十分だが、保守派(リバタリアン)の論客である著者は、その是正のために政府が介入すべしという、ヨーロッパ型の福祉国家の前提にある人間観や世界観を徹底的に批判する。日本のリベラル派も一考する価値はありそうだ。
→紀伊國屋書店で購入 こんな領域横断もありか、という驚き 明治後半から昭和初年にかけての、現在の日本の基盤を築いた半世紀という、いま日本で学者をやっていて一番面白がるべき問題を(「文学」を入口として)探ることができる本を、当書評欄でここ数回、続けて取り上げてきた。蓋を開けてみると皆、いわゆる博士論文が世間に向けて出版された大著ばかりというのも、長い間「学者」をやってきてしまったぼく自身の限界を示すのかもしれないし、逆に、誰も見向きもしない、つまらないものの代名詞のように言われてきた博士論文にも時代の流れで面白いものが出始めた、喜ばしい兆候かもしれない。 大喜利(おおぎり)とでも言える一冊を見つけたので、それを推輓して博論傑作選に一応のキリをつけたいと思う。それが、京都大学大学院に提出されたこの論文。「ただし、研究者だけではなく、近代日本の富裕層や金銭的な成功者に関心をもつ方々にも読んで」欲
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