今年の3月はあまり暇がなかった上にちょっとしたトラブルもあった散々な月だったが、2月24日に始まったウクライナ戦争で思い出していたのは先月読み終えた大岡昇平の『レイテ戦記』だった。熱帯のフィリピン・レイテ島と冬季の北の国とで気候は真逆だけれども、兵站のことなどろくに考えずにロシアが侵攻したという報道が本当であれば、ロシア軍の兵士たちの中には1944年から翌年にかけてフィリピンで経験した日本軍兵士たちのような目に遭っている人たちもいるかもしれない。 今月は本はミステリ3冊しか読了していないし、ロシアや北欧の音楽について書きたいと思っているがそれは別記事に回し、読んだミステリ3冊について書く。 まず新田次郎 (1912-1980)の短篇集『山が見ていた』(文春文庫)が新装版になっているのを本屋で見て買ったが、山岳小説集かと思って読んでみたら新田自選のミステリ集だった。 books.bunshu