2-3.姜尚中と「愛郷心」 ところで、最近の姜尚中と言えば、二言目には「故郷」の熊本への愛を表明し、「愛郷心」「パトリ」の価値を称揚することで知られる。姜の「愛郷心」の称揚は、今や小林よしのりですら引いてしまう(注8)レベルに到達している。 姜が、こうした立場を強く打ち出してきたのは、管見の範囲では、『愛国の作法』(朝日新書、2006年10月刊)が初めてである。同書から、いくつかの発言を引用しておこう。 「わたしにも自分が生まれ、育った地、熊本への愛着があります。もっとも、ケンタッキーの黒人たちとは較べようもないにしても、やはり差別と賎視に堪えなければならなかったことは言うまでもありません。しかも、父母に連なる世界(韓国・朝鮮)は、劣った否定的なイメージにおおわれていました。直接、そう指摘されなくても、いつもそう刷り込まれていたのです。」(150頁) 「「郷土」への愛着は、わたしの中に身体