人種差別の歴史 今年、米国で初のアフリカン・アメリカンの大統領が誕生した。 公民権運動が巻き起こった1960年代、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が「私には夢がある」という演説で、「奴隷解放宣言」から100年経ってもなお米国の黒人が、自由と平等を理念とする「民主主義」国家で疎外されている現実を訴えてから約半世紀後、アフリカン・アメリカンが大統領に就任したという歴史的意義は大きい。 しかし一方で、誰もが一生懸命努力すれば成功する可能性があるとする「アメリカン・ドリーム」的な側面ばかりが強調され、過去に白人が行ってきた肝心の残忍な人種差別への歴史認識のほうは覆い隠されてしまっている感がある。 実際、オバマ大統領自身も就任演説で、「自由」と「米国の信条」を強調することで、南部諸州で長く続いていた「隔離しても平等」という当時の黒人差別構造の暴力的歴史をあいまいにしてしまっている。