テレビ画面の中の彼はいつも怒っていた 「やっとお会いできましたね」 椅子から立ち上がりながら、蓮池透さんは言った。僕も同じ思い。正真正銘の初対面であるけれど、そんな気がしない。ほぼ同世代で新潟出身ということも共通しているけれど、もちろんそれだけが理由じゃない。 北朝鮮による拉致被害者である蓮池薫さんの実兄であり、家族会(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)の元副代表で事務局長でもあった蓮池透さんの顔は、五人の拉致被害者が帰国した2002年10月以降、家族会のスポークスマンとして、ほぼ毎日のようにテレビで見ていた。 テレビ画面の中の蓮池さんは、いつも怒っていた。苛立っていた。日本政府の対応は生ぬるいとして、北朝鮮への強硬な制裁を激しく主張していた。憲法九条が拉致問題の解決を阻害していると発言したこともある。北朝鮮に対して自衛隊を出動させるべきだと主張したこともある。 その蓮池さんが、