オーストリアのグラーツ工科大学の研究者たちは2024年8月28日、3Dプリンティング技術と超音波接合技術を用いて、木材と金属、ポリマーの複合材を極めて強固に接合する技術を発表した。 木材は再生可能な素材であり、気候変動に左右されず軽くて丈夫であることから、自動車などの工業製品において魅力的な材料だ。ただし、自動車を構成する金属やポリマー複合材料などを、いかに強固に木材と接合するかが課題の一つであった。 同大学の研究者たちは、接着剤やネジを使用しない、極めて強固な接合を実現する技術を2種類用意してテストに成功した。同技術の木材への応用手段は特許出願中で、航空機、自動車、家具産業への応用が期待される。 テストで使用した素材は、木材としてブナ、オーク、ポリマー、複合材として炭素繊維強化ポリアミドとポリフェニレンサルファイド、そして金属材料としてステンレス鋼316L、Ti-64合金がそれぞれ選択さ
ペンシルベニア大学は2024年2月16日、電気の代わりに光波を利用して、AIの学習に必要な数学計算を行う新しいコンピューターチップ「シリコンフォトニック(SiPh)チップ」を開発したと発表した。コンピューターの処理速度の向上と同時に、エネルギー消費量の削減が見込まれる。 今回の研究では、ベクトル行列乗算を実行できるチップの設計を目指した。この数学的演算は、現在のAIツールの原動力となっているニューラルネットワークの開発と機能の中核をなす。 開発されたSiPhチップは、光波と物質との相互作用を利用するものだ。チップの設計では、ナノスケールで材料を操作し、最速の通信手段である光を使って数学的計算を行うという先駆的な研究と、大量生産のチップに使用される安くて豊富な元素であるシリコンを用いるSiPhプラットフォームとを、初めて組み合わせた。 このチップの特徴は、均質な厚さのシリコンウェハーを使うの
米エネルギー省(DOE)は、2023年11月28日、カリフォルニア州ソルトン湖地域に豊富なリチウム資源が存在するという、DOE所管のローレンス・バークレー国立研究所が実施した分析の結果を発表した。 分析結果によると、ソルトン湖地域の総埋蔵資源量は3400キロトン以上のリチウムを生産できる可能性があり、その量は電気自動車(EV)用バッテリー3億7500万台分以上に相当し、アメリカ国内を走行する自動車の総台数を上回るという。 この分析によって、2050年までにネット・ゼロ・エミッション経済を実現するというバイデン米大統領の目標に不可欠な、定置用蓄電池とEV用バッテリーに使用される重要な鉱物のアメリカ国内供給源として、この地域が大きな可能性を秘めていることが確認された。 アメリカは、国産リチウムを抽出、精製、生産する能力が限られており、アメリカが必要とするリチウムのほぼすべてを輸入しなければなら
香港大学の研究チームが、ステンレス鋼の不動態被膜も溶解してしまうような厳しい腐食環境においても、優れた耐食性を維持するステンレス鋼を開発した。従来のCrベースの不動態被膜に加えてMnベースの不動態被膜を生成させることにより、過不動態腐食を抑制できることを実証したものだ。現状高価な貴金属を被覆したチタンが用いられている、脱塩海水から水素を製造する水電解装置において、経済的な構造材料として活用できると期待している。研究成果が、2023年8月19日に『Materials Today』誌にオンライン公開されている。 産業界において耐食性材料として長い歴史のあるステンレス鋼は、腐食環境に広く使用されている重要な材料だ。耐食性を実現する基本元素としてCrが含有されており、Crの酸化により不動態被膜が形成され、自然環境における耐食性が確保される。だが、電解溶液環境で他の金属との接触などを通して腐食電位が
ハイドロゲルは、視力矯正から医療の飛躍的進歩まで、私たちの日常生活を向上させる原動力となっている。おむつやパーソナルケア用品などの衛生用品も、ハイドロゲル技術の恩恵を受けている。 スウェーデン王立工科大学(KTH)の研究者が開発した、レンガを割るミニロボット用筋肉は、1V以下の電気インパルスで制御され、必要に応じて形を変えたり、伸縮したりできる。この素材は、木材由来のセルロースナノファイバーで作られており、医療や生化学的生産における可能性も示している。 この成果は、KTHの研究者らによって2023年7月14日付『Advanced Materials』誌に報告された。 研究チームは、加圧された空気や液体の力で膨張するロボット筋肉ではなく、電気に反応し、特定の方法で膨張する特殊なハイドロゲルを作った。1V以下の低電圧を加えると、水分子がハイドロゲルの中に入り込むことで、300%まで大きく伸びる
米コロンビア大学とコネチカット大学、ブルックヘブン国立研究所の共同研究チームが、生体物質とガラスを組み合わせて、鋼鉄より高強度で非常に軽量な素材を開発した。 同研究成果は2023年6月27日、「Cell Reports Physical Science」誌に掲載された。 防衛や医療機器、自動車分野などのさまざまな業界において、強度がありながら軽量な素材の需要が高まっている。 しかし、多くの材料には構造を乱すような欠陥や不純物が存在する。通常の製造方法では、応力がかかると簡単に割れてしまう欠陥ができるのだ。ガラスが壊れやすい材料であるのも、その欠陥に大きな原因がある。 デオキシリボ核酸(DNA)は、遺伝情報を伝える生体物質としてよく知られているが、材料科学者からは高い規則性のある高分子材料として注目されている。 DNAは、核酸の相互作用により指定した位置に整然と並ぶよう、自己組織化する。研究
シンガポールの南洋理工大学(NTU Singapore)の研究チームが、耐用寿命に達した太陽電池パネルから、高純度のシリコンを低コストで効率的に回収する手法を考案し、高容量の次世代型電池として期待されている、リチウムシリコン電池にアップサイクルできることを実証した。25~30年の耐用寿命後に大量に発生する太陽光パネル廃棄物の有効な資源回収法になるとともに、リチウムイオン電池の性能向上に寄与すると期待している。研究成果が、『Solar Energy Materials and Solar Cells』誌の2023年8月号に論文公開されている。 再生可能エネルギーを牽引する太陽電池は、地球温暖化が深刻になる中で設置が世界的に拡大しているが、その耐用寿命は通常25~30年であり、2050年までに重量にして7800万トンのパネルが寿命に達すると試算されている。寿命に達した太陽光パネル廃棄物には、主
南オーストラリアのフリンダース大学と中国の浙江理工大学の共同研究チームが、安全で効率的かつ無害な水性アルミニウムイオン電池を創成する指針を得ることに成功した。酸化還元電位が高く、電気化学反応が高速なアルミニウム(Al)は地殻に豊富に存在するので、低コストで持続可能性に優れ、難燃性かつ空気中で安定な水性電解質を用いることから、安全かつ効率的で無害なバッテリーを創成できると期待されている。研究成果が、2023年6月23日に『米国化学会誌』に公開された。 リチウムイオン電池はスマートフォンからEVまで、幅広く活用されている。しかし、リチウムによる発火の危険性や、リチウム資源の遍在による長期安定供給性に対する懸念から、リチウムに代わる代替元素を使用した二次電池の開発が進められている。 アルミニウムイオン(Al3+)や 亜鉛イオン(Zn2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)を含む多価金属イオン電池は
カリフォルニア大学サンディエゴ校とBASFの研究チームは、1回の3Dプリントで作成でき、電子回路を必要としない柔軟なロボットグリッパーを開発した。このソフトグリッパーは3Dプリンターから取り出してすぐに使用可能で、まるで重力センサーやタッチセンサーを内蔵しているかのように、物体を持ち上げたり、保持したり、離したりできる。 一般的な3Dプリント手法で造形されたソフトグリッパーは、造形直後は硬くて隙間が多く、実際に使えるようにするには造形後の後処理として多くの加工と組み立てが必要だ。研究者らは、プリンターのノズルが各層のパターン全体を連続的になぞるという新しい3Dプリント方法を考案することで、これらの問題を回避した。この方法はグラフ理論に登場する、グラフの全ての辺を通る「オイラー路」に基づいているという。この論文の上席著者であり、カリフォルニア大学サンディエゴ校ジェイコブス工学部のMichae
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、切り紙を応用して軽量かつ丈夫な構造体を製作した。日本の切り紙の技法で作られた丈夫な金属格子は、コルクよりも軽く、カスタマイズ可能な機械特性を持つという。 同研究成果は、2023年8月20日~23日にボストンで開催されたアメリカ機械学会IDETC-CIE 2023で発表された。 研究チームは、ミウラ折りとして知られる折り紙の折り目パターンに切り目を入れる技術を用いて、3Dプリントで製造できる規模より大きい、プレート格子として知られる高性能構造体の製造法を開発した。 同手法を用いて作製したアルミニウム構造体は、1平方メートル当たりの重量90kgと軽量でありながら、62kN以上の圧縮強度を持ち、一般的なアルミニウム波板の3倍の力に耐えた。さらに、同手法は、折り畳みや切断するパターンによって、剛性と強度、曲げ弾性率などの特定の機械特性を調整できる。
東京工業大学は2023年8月10日、産業技術総合研究所(AIST)と共同で、薄膜転写技術を用いて異種材料結晶を微小な薄膜シールに加工し、シリコン光回路上に集積する「マイクロトランスファープリンティング」技術を発表した。この技術により、従来研究と比較して回路面積が10分の1以下となる、超小型の光アイソレータの作製に成功している。 近年のデジタルコヒーレント光伝送技術は、レーザー光源に対する要求基準が厳しくなっており、光アイソレータと呼ばれる反射戻り光をカットするための機能性光素子の集積化に注目が集まっている。しかし、高性能な光アイソレータの構成に必要な結晶材料が特殊で、動作に欠かせない磁気光学効果を発現するイットリウム鉄ガーネットという結晶を組み込む必要があった。 従来、結晶構造が大きく異なる結晶同士を密接に一体化することは困難とされており、1つの光回路にさまざまな光学材料結晶を組み込んだ多
名古屋大学の研究チームが、輝度の高い艶があって見る方向によって色が変化する、甲虫の外殻表面や蝶の羽根の発色メカニズムを模倣することによって、偽造防止が可能なQRコードを作成する手法を考案した。研究成果が、2023年7月9日に『Advanced Optical Materials』誌に公開されている。 同研究チームは、螺旋構造を持つ特殊な液晶であるコレステリック液晶(CLC)について、直径が数μmと小さく、サイズ分布が均質な球状粒子を作成することに成功した。そして粒子直径や螺旋ピッチに依存して、さらに見る角度によるピッチ投影長さの変化に対応して、特定波長だけを選択的に反射することを確認するとともに、非対称性によって鏡像に重ね合わせることができないキラリティー特性を利用して、特殊な円偏光子を使用しないと読み取れないQRコードに応用できることを実証した。 CLCは、長い分子が幾重にも螺旋状に重な
2023-8-3 技術ニュース, 機械系, 海外ニュース 2ストロークエンジン, 4ストロークエンジン, cam-tracks, e-REX, INNengine, エンジン, カムシャフト, ガソリン, クランクシャフト, シリンダーヘッド, シリンダー(燃焼筒), バルブ, ピストン, レシプロエンジン, レンジ・エクステンダー, 回転運動, 学術, 対向ピストン, 往復運動, 軽油, 1ストロークエンジン ガソリンや軽油などの燃料を空気と混合して燃焼させるエンジンは、吸気/圧縮/燃焼/排気の4つの行程を繰り返す内燃機関だ。大半のエンジンは、4つの行程を通してシリンダー(燃焼筒)の中をピストンが上下する往復運動を、回転運動に変えて出力する「レシプロエンジン」と呼ばれるものだ。 そのうち、出力軸が2回転、すなわち1個のピストンが2往復=4ストロークして4行程を完了するものを、「4ストロー
物質の中には、超低温に冷却されると構造が変化し、電気抵抗がゼロとなる超伝導現象を生じるものがあるが、この構造変化は「ネマティック転移(nematic transition)」と呼ばれている。 ネマティシティ(nematicity)という言葉は、ギリシャ語で「糸」を意味する「ネマ(nema)」に由来する。概念的な「糸」を表す場合にも使われ、近年物理学の世界では、物質を超伝導状態に導く協調的なシフトを表現している。例えば液晶など分子が整列する現象もネマティックと呼ばれている。電子ネマティック転移では、電子間の強い相互作用によって、物質が微細なソフトキャンディのように、ある特定の方向に無限に伸び、その方向に電子が自由に流れるようになるのだ。 問題は、どのような相互作用が物質の伸びを引き起こすかということだ。いくつかの鉄系超伝導体では、個々の原子が協調的に同じ磁化方向にスピンをシフトさせることで、
Flipper Devicesが開発した、ペンテスター(脆弱性を試験するペネトレーションテスター)やギークを対象としたポータブルマルチツール「Flipper Zero」が話題になっている。同社は、2020年にクラウドファンディングサイトKickstarterで480万ドル(約6億7千万円)を調達した。 Flipper Zeroは、無線通信プロトコルやアクセス制御システムハードウェアなどのデジタル機器をハッキングするための、ポータブルマルチツールだ。オープンソースで実装されており、カスタマイズもできる。 ツールの寸法は100×40×25 mm、重さは102gだ。操作画面は1.4インチで128×64ピクセルのモノクロ液晶は、超低消費電力を特徴とする。また、メニュー用に、5つのボタンで構成する操作パッドを持つ。 機能面では、Sub-1 GHz帯の無線モジュールを装備する。内蔵アンテナとTexas
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、生体組織のように柔軟かつ耐久性があり、しかも金属のように電気伝導する、ゼリー状のインプラント用非金属材料を開発した。高導電性高分子とヒドロゲルを複合した材料であり、インプラントなどの電極において、生体適合性に懸念のある金属を置きかえる可能性がある。研究成果が、2023年6月15日に『Nature Materials』誌に公開されている。 ペースメーカーのように体内にデバイスを埋め込むインプラントには、いわば「電子インプラント」と呼べるものがあり、筋肉や神経を電気的に刺激したり、心臓からの電気パルスを外部モニターに伝達したりする。心臓手術から回復段階にある患者には、副作用としての心臓発作を避けるために、心臓表面に装着して数週間に渡り電気的刺激を加えている。 このような電子インプラントでは一般的に金属電極を用いるが、金属には生体適合性に懸念があ
ホーム » エンジニア分野別 » 化学・素材系 » 全固体電池の注目メーカーとは? トヨタや日産のEV化で注目を集める全固体電池のメーカーを紹介 全固体電池とは? これまで広く普及してきた電池の電解質は液体でしたが、全固体電池は電解質を固体にし、すべてを固体で構成しています。電解液は液漏れや発火の危険性があるため、固体の電解質を用いた、より安全な電池が求められています。全固体電池は安全性だけでなく耐久性や性能の面でも優れており、次世代バッテリーとしての期待が高まっています。 仕組みや構造はリチウムイオン電池とほぼ同じで、リチウムイオンが電解質を移動することで電気が流れます。リチウムイオン電池の電解液は可燃性の有機溶剤系のため、電池の温度が上昇すると発火する可能性があります。全固体電池は発火の危険性を小さくする一方で、固体の電解質中ではリチウムイオンが動きにくくなるデメリットもあります。その
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