『日本人のための憲法原論』小室直樹/集英社/1890円 桜井としき= 撮影 ■憲法は国家権力を縛るためのもの 「私の見るところ、日本国憲法はすでに死んでいます」というケンシロウばりの死亡宣告から始まるユニークな憲法入門書がある。宮台真司、橋爪大三郎、副島隆彦といった現代のスター論客たちが師と仰ぐ小室直樹の『日本人のための憲法原論』がそれ。同書は、もともと2001年に発売された『痛快! 憲法学』の愛蔵版であり、憲法入門書のロングセラーとしていまなお読まれ続けている1冊だ。 本当に憲法が死亡しているかはさておき、この本の特徴は、憲法の“そもそも論”を展開している点にある。たとえば小室氏は「憲法は誰のために書かれた法律か」と問う。「日本人」とか「国民」とか答えた人は「不合格」。正解は「国家権力すべてを縛るため」すなわち「憲法とは国家を縛るための命令」であるというのが、憲法理解の第一歩だとい