壁掛けの暦をめくれば風薫る五月。暖かな日差しが降り注ぎ、乾いた空気が心地よい。梅雨入り前のほんのひととき。一番好きな季節。そしてまた、私は一つ歳を取る。 公園のベンチに腰を掛け、目に染みる新緑に抱かれて、大きく息を吸う。しかし、明るい木漏れ日とは裏腹に、何故か感傷的な言葉が心をよぎる。 『この広い空の下の何処か、移ろい行く景色を、君は今、誰と、見ているのだろう』 偶然なのか、カメラに収めた写真の花の、それぞれの「花言葉」も、心なしかうら寂しい。 ライラックは「思い出」 黄色いクサノオウも同じく「思い出」 イチリンソウ「追憶」 鮮やかな紫色のシラン、「あなたを忘れない」 オオムラサキツユクサ「尊敬しているが恋愛ではない」 決して意識して選んでいる訳ではないのだ。気分を取り直して、 ハンカチの木「清潔」 ベニバナトチノキ「博愛」 ヒトツバタゴ(ナンジャモンジャ)「心が清らかで私欲がない」 終盤