2014-08-28 バランス 世界と聞いてわたしが思い浮かべるのはいつでも大きな天秤の皿の上で、わたしたちはいつもそこで食べたり働いたり眠ったりしている。もういっぽうの皿の上にも同じような世界があって、そこではまた別な人たちが眠ったり働いたり食べたりしたりしている。この世における幸福の総量は決まっていて、誰かが笑えば誰かが泣くというのは映画の台詞だったか小説の一文だったかもう忘れてしまったけれども、わたしもそんな風な考えの持ち主で、だからかなしいことがあると天秤を思い浮かべるのかもしれない。今どこかで誰かにはうれしいことがおこっているのかもしれないと。それで心が慰められるほどにお人よしではないけれども。そう考えてみると幸福をひとりじめしているように見えるあのひともあのひとも、一生という単位で見ると受けとる幸福の量はその他のひとと大して変わらないのかもしれない。良いことと悪いことはたいてい