早春とフィルム写真 カラーネガフィルムとはなんとも不思議なメディアで、その季節の陽光だとか湿度が写真に乗ってくるような気がする。 冬の写真は暗くかさついているし春の写真は霞がかって見える。夏の写真は湿度100%に近い空間を貫いてくる強い太陽光がフィルムの乳剤面に記録されてい…
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ひさしぶりにスーツを買うことにした。ふだんは月に一、二度くらいしか着ないスーツだが、もうすぐ社外のわりと大事なお客さんに会う予定があることと、手持ちのスーツがどれもくたびれてきたこともあって、そろそろ背広でも新調しようかしら僕、という気持ちになっていた。 スーツそのものに思い入れはない。基本的には、べつになんでもいいのである。3万円均一でスーツを売っている店があって、ちょっとよさげなので、そこで買うことにした。値段も手ごろだし、ちょうどいいのではないか。そう考えて店へ向かう。キュートな女性店員が、ファルセットをきかせた声で「いらっしゃいませ」とわたしを歓迎する。とりあえずはいくつか試着してみることにした。店員の女性は、これは裾がブーツカットでかっこいいとか(スラックスの裾がブーツカットってどういうあれだ)、こっちはステッチが凝っていて洒落ているとか、いろいろと商品を勧めてくるが、なんだかぴ
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