突き棒がゲージの頭蓋骨を貫いた様子。主治医のJ.M.ハーロウによる[1]。 フィニアス・P.ゲージ(Phineas P. Gage、1823 - 1860)[脚注 2]は、米国の鉄道建築技術者の職長である。今日では、大きな鉄の棒が頭を完全に突き抜けて彼の左前頭葉の大部分を破損するという事故に見舞われながらも生還したこと、またその損傷が彼の友人たちをして「もはやゲージではない」と言わしめるほどの人格と行動の根本的な変化を及ぼしたことによって知られている。 このフィニアス・ゲージの事故は、長年「アメリカの鉄梃事件 (the American Crowbar Case)」とよばれ、一時は「他のいかなる事件よりも我々の興味をそそり、予後というものの価値を落とし、生理学の理論を覆しまでした事件」[2]とまで言われた事件であり、19世紀当時の精神と脳とに関する議論、とりわけ脳内の機能分化に関する議論に