続「書物における明治二十年問題／橋口 侯之介和本はその複合的な価値と維持性の故に、なお伝存している。他方、大量生産で江戸の本屋業を壊滅させた近代の活字出版業も黄昏を迎えた。活字の制約から離れた「出版」業をゼロから再構築するという仕事が現在の出版人に課せられている。活字の電子化に何か意味があるように考える人がなお少なくないが、近代によって失われた江戸出版の豊かさ（多様で奥の深い書物観）こそ、インターネットを前提とした次世代の出版が復活すべき価値であろう。（編集子解題） 続「書物における明治二十年問題：「本とは何か」の答えは、和本から見えてくる 近代社会が失ったもの 明治ご一新があったその時でなく、20年かけてじっくり和本的人間関係は壊れていった。進化すぎた江戸の本屋業では残念ながらその動きに抵抗できなかった。 価値観の変動、政策、技術といった背景はあるものの、やはりこれは「人」の問題である。江戸から明治へ出版人がそっくり入れ替わった背
