パウル・クレー研究などで知られる著者による、入門的な本。 ところで、著者名でググって、09年に亡くなられていたことを知った。クラシック音楽についても造詣が深かったよう。 基本的なフォーマットとしては、著者の選んだ20世紀の絵画作品それぞれについて、解説していくというものになっている。なので、別に美術史の本というわけではないのだけど、しかし当然のことながら読み進めるうちに、筆者の美術史観が背景にしっかりとあることが分かり、20世紀美術史としても読める。 話の導入としては「具象絵画はわかるけど、抽象絵画はよくわからない」というよくある感想に対して、わかる抽象/わからない具象を示すのがこの本である、ということになっている。 構成としても、前半が抽象絵画編、後半が具象絵画編となっている。 この前半と後半のあいだに、筆者がライプチヒで旧東ドイツの現代絵画を見た際の体験がエピソードとして挿入されている