ベルン駐在中国国民政府の武官が米国からの最重要情報として「日本政府が共産主義者たちに降伏している」と打電した背景には何があるのか。陸軍中枢にはソ連に接近し、天皇制存続を条件に戦後、ソ連や中国共産党と同盟を結び、共産主義国家の創設を目指す「終戦構想」があった。 鈴木貫太郎首相(肩書は当時)は昭和20年6月22日の最高戦争指導会議で、ソ連仲介の和平案を国策として決めた際、「(共産党書記長の)スターリンは西郷隆盛に似ているような気がする」と、スターリンを評価する発言をした。 この発言に影響を与えたとみられるのが、首相秘書官を務めた松谷誠・陸軍大佐が、4月に国家再建策として作成した「終戦処理案」だ。松谷氏は回顧録『大東亜戦収拾の真相』で「スターリンは人情の機微があり、日本の国体を破壊しようとは考えられない」「ソ連の民族政策は寛容。国体と共産主義は相容れざるものとは考えない」などと、日本が共産化して