マラッカ・ジレンマ 前回、中国のシーレーンが事実上アメリカの支配にあるという話をしました。特に、輸入原油全体の8割が通過するマラッカ海峡は、中国の最重要チョークポイントなのですが、この海峡の安全保障を米軍に依存しているという現実が、北京政府にとっては不安であるし不快なのです。マラッカ海峡は海賊が頻発する海域ですし、台湾有事の際、アメリカが中国の補給ルートを断つために海峡を封鎖するという可能性(限りなくゼロに近い…というかありえませんが)に対して、数あるシナリオの一つとして中国が対応策を検討するのは当然です。この、マラッカ海峡において中国が抱える潜在的な脆弱性を、「マラッカ・ジレンマ」と呼びます。中国政府も、この脆弱性を公式に認めており、マラッカ海峡を封鎖された場合に備えて、物流対策としてエネルギー輸送ルートの多様化を図ることや、中東から中国に至るシーレーンに拠点を整備することを目指して活動