GDP(國内總生産)の定義式を楯に政府支出の拡大を訴へるやうな經濟評論家たちは想像したこともないだらうが、GDPの概念には多くの問題がある。 GDP=民間消費+民間投資+政府支出+純輸出 右邊の各項目のうち、民間消費、民間投資、純輸出の増減は政府の思ひ通りにならないが、政府支出だけは政府がその氣になりさへすれば自由に増やすことができる。經濟を成長させたければ増やしたければ政府支出を増やせ――といふ主張が的外れであることはすでに指摘した。經濟は政府支出のおかげで發展するのでなく、政府支出にもかかはらず發展するといふのが正しい。 そもそも「政府がその氣になりさへすれば自由に増やすことができる」といふこと自體、政府支出の異樣な性質を物語つてゐる。民間消費、民間投資、純輸出が政府の思ひ通りにならないのは、個人が自發的な判斷で買ふか買はないかを決めてゐるからだ。これに對し政府は市民から税金を強制的に