生成 AI の急速な発展により恩恵を受ける一方で「私が作らなくてもどうせ AI が作るし」「今私ががんばってもすぐに AI が越えてくるし」といった生成 AI ニヒリズムとでも言える空気が蔓延しているように思います。ここでいうニヒリズムとは「長い間信じてきた価値の喪失に起因する無気力状態」というくらいの意味です。私の知り合いの中にもこのような無気力状態を感じている人が何人もいました。新しい物事を作り出すことを生きがいとしている人にとっては、AI の発達はアイデンティティに関わる重大事項となってしまっています。 本稿では、研究者の仕事は生成 AI に取って代わられることはないこと、そして研究者としてのアイデンティティを守るにはどうすればよいかを論じます。ここでいう研究者というのは、本質的に新しいことを探求する人のことを指しており、自身の仕事に応じてクリエイターや起業家と読み換えてもらっても問