今週のコラムニスト:マイケル・プロンコ 〔2月18日号掲載〕 初めて東京にやって来たとき、新しくて複雑な環境を理解するために自分なりの理論をいくつか編み出した。その中の1つが、どの駅も南口には個性的で気取りがなくて、少しごちゃごちゃした古い日本が息づいているというもの。一方の北口にはデパートやバスロータリーがあり、モダンで小ぎれいな日本が広がっている──。 この理論は大抵当てはまったが、完璧ではなかった。何年もの間、私は持論にしがみついて、歌舞伎町は新宿駅の南側だと言い張った(本当は北東なのに)。東京駅の場合は、南のほうへずっと歩いて行ってスナックや焼き鳥の屋台、雀荘が現れるまで高層ビル群は見えないことにした。この理論が気に入った私は、どの駅でも北側と南側に行けば、東京のまったく違う2つの顔に出合えると信じていた。 しかしやがて、私が以前利用していた戸塚と品川の駅の雑然とした南側にまで、し