私は高校時代、3年間図書委員会だった。 司書になろうかな、と思った時期もあった。 大学時代は講義に出ていた時間よりも、図書館にいた時間の方が長かったと思う。 それが今では、中身が読めればディスプレイに表示された情報(電子書籍)で基本的にかまわないという人間になってしまったが、そんな人間に対しても「人類にとって書物とは何だったのか」を改めて気付かせてくれるのが香月美夜『本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~』である。 現代日本に生きていた本好きの女の子が異世界に転生する――熱を出して倒れたマインという少女の意識に入ってしまう。 「本好き」と言っても「活字が読みたい」にとどまらない。 彼女は物質・物体としての「本」が好きなのだ。 その世界の、彼女が転生した家庭レベルの生活水準では貴重品である本に飢えた彼女は、文字を覚えて読めるようにする。 だけでなく、異世界で和紙をつくり