藤井聡・中野剛志『日本破滅論』(文春新書)で對談者の二人は、公共事業に消極的な主流派經濟學を罵倒し、日本を破滅させないためには、大規模な公共事業を斷行せよと主張する。もちろん、自分たちの主張こそ亡國に導くものだとは、まつたく氣づいてゐない。 藤井は政府のことを「日本国家の最大の大旦那」(246頁)などと呼ぶが、大旦那とは、自分のカネをたくさん持つてゐる人のことである。しかし政府に自分のカネはない。使ひたければ、國民から税を取り立てる(通貨發行による見えない税、未來の課税をあてにした借金を含む)しかない。だから教科書に書いてあるケインズ教の教義と異なり、政府がカネを使へば使ふほど、國民は自分で使へるカネが減り、差し引きで經濟にプラスの效果はない。 藤井は、政府支出を擴大すると、實際にGDP(國内總生産)が増えると主張する(133頁)。外見上の效果はあるかもしれない。だがやがて厄介なことになる