東京芸術大学芸術学科で芸術理論と美術史を学んでいた中村は、美術学者の道を歩み始めますが、1979年、自らの絵画理論を立証しようと制作した作品が、当時芸大の油画科で教鞭をとっていた榎倉康二氏の眼にとまりました。榎倉氏の強い勧めを受けて、理論家の道を止め、1980年代初頭より本格的な絵画制作者として活動を開始。81年の個展を皮切りに、数々の展覧会を開催し、日本の抽象画の旗手として熱い注目を集めます。旺盛な創作活動の後、しばらくの沈黙期間を経て、今春、国立新美術館で大規模な回顧展が行われ、再評価の機運が高まっています。「西欧絵画における、絶対性、中心性、全体性、純粋性とは別の次元における絵画の成立」を目指してきたと語る中村。30年以上にわたる作家の独創性と普遍性の探求の成果を、本展では、彼のチョイスする十数点の抽象画にて発表いたします。もの派の雄、李禹煥の展覧会に引き続き、日本の現代美術史の結節