『数学の想像力 正しさの深層に何があるのか』筑摩書房 加藤文元/著 本書の大きな問いは、「数学における<正しさ>とは何か?」というものだ。この問いの意味が分からないという人もいるだろう。しかし、その点に触れるのは後回しにすることとして、まず、数学における「証明」について書いていこう。 本書によれば、数学における「証明」というのは、古代ギリシャで生まれた。そして、ここが重要なポイントなのだが、古代ギリシャで“しか”生まれなかった。数学というのは、中国・インド・アラビア・日本など様々な地域で、様々な時代に発展したが、そのほとんどが「いかに計算するか」を追い求めた。ただ唯一古代ギリシャのみが、「証明」という手法を生み出したのだ。 では、何故古代ギリシャだけが「証明」という手法を生み出し得たのか。そこには、「無理数」と「無限」に対する“恐怖”があった。 「無理数」については有名な話だから、知ってい